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「その首はどんな顔をしていた」と、友達のひとりが訊いた。
「いや、――わしはそんなこたあ嫌ひだ」
犬は横へとびこんだ。だが、匂も嗅がず、草の中から頭を出して、房一の方をしきりと眺めながら同じ方向に歩いている。
――「それに、おれは今まで散々したい放題のことはして来た。そろそろ、親の云ふことは聞いてもいゝ頃だ」
「はあ、それは――」
「なに?」
「ふん。何でもありやせんよ。大方、腹でも痛かつたんだらう」
何となく身体が倦だるかつた。それにちがひはない、今日は珍しく朝早くから川につききりで、おまけに呼びもどされるとすぐ今の騒ぎだつた。埃で黄くなつた頭髪、泥と血の塊り、男の不安げな眼、それからあのいくらか仁義を切るやうな半シャツの甥の身構へだの、それらがもう一度頭の中に蘇よみがへり、一列になつて通つて行つた。
と、大声で訊いた。
彼はそれを云ひに来たのだつた。
「今晩、寄せてもらつてもえゝですか」
「うむ」
と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。