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    房一は苦笑した。とにかく珍客にはちがひなかつた。そして、たつた今さつきまで房一は彼等のお見舞ひでわれ知らず興奮し、緊張し、それからあの半シャツの男と言葉の上でなく、眼と眼で、構へと構へでやりとりした、それが突風の去つた後のやうな軽いあつけなさを残していた。

    「こんなところで初対面のご挨拶をしようとは思ひがけなかつたですね。――いや、初対面といふわけでもないんですな」

    「おい、お茶を入れてくれ」

    「それは勝手だが、あんなもの、温泉と思っちゃいかん」

    しきりにすゝめられたが、道平は縁側に出て、いつのまにか下していた着物の裾を又尻からげにかゝつていた。頑固といふほどではないが、その様子には円味のある手ごはさと云つた風なものが感じられた。

    「え、何だつて、徒歩てくで通るかつて?」

    「おい、やつは所長だぜ。まだ新任で、来たばかりなんだ。――行かう!」

    「ねえ」

    「相沢さんも見えないな」

    練吉はふつと思ひ出し笑ひをした。それは微笑と云ふよりは、気の好い、何だかすべつこい、いくらか相手を軽蔑したやうな表情だつた。

    富田は庄谷の方に向きなほつた。

    「あ、お帰んなさい」

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