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例の奉祝行列のお終ひに小谷から慰労宴をやらうと云はれたときに、房一は道平が練吉の診察を受けたまゝになつているのを気にかけていたことを思ひ出し、練吉をも加へて小谷と二人を招待しようと云つたのだが、小谷はそれはそれ、これはこれと云つて聞き入れなかつたので、改めて今二人を料亭染田屋に招いたのであつた。
徳次は指で真似をした。
「一体どうしたというのだ。」
「だつて、喜作さんはこの土地にはいないでせう」
今泉にはやつと徳次の考へていることが判つたので、熱心に説明した。
その時、練吉はぐつと盃をつきつけた。
「大きに。ありがたうござんす。よろしう頼んます」
どこかで、「営林署だ」といふ声が聞えた。そして、黒い人影は左手へ向けてぞろぞろと走つて行つた。何か叫び声のやうなものがその方で起つていた。
「ホリウチ?」
「はあ」
富田はすぐ又自分の方に話をひきとつた。
そこには、房一の紅黒い、怒張した顔があつた。いつのまにやつて来たのだらう、徳次はぎゆつと片手で押へつけられたまゝだつた。そして、房一の怒声を聞いた。
「梨地から水神淵へ降りる路ができたからね、そこへ出れば、帰りはずつと楽だ」