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我々はそれから「き」の字橋まで口をきかずに歩いて行ゆきました。……
「失礼ですが、もしか、あなたは高間さんではありませんか」
「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。
と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。
「別に惜しいほどのことではありませんよ」つづけて、ふいに調子を変へると、
房一は大きくうなづいて見せた。もう獲物は大分前からとまつていた。
房一は熱心に愛想よく椅子をすゝめた。
築地には四五本の木材が立てかけられて、玄関に通じる石畳の上には鉋屑が一杯に散らばつていた。その白いのや紅味がかつた真新しい木の色はふしぎな生気をこの家に与へていた。あの低い大きな屋根がぐつと身を起したやうにさへ見える。
「ジョン、降りろ」
その通り、近くに似たやうな河はいくつもあつたが、それは鮒がたくさんとれると思ふと鮎がさつぱり駄目だし、うす濁りがしているし、ずつと先の木ノ川は河幅こそ広く水もたつぷりしているがあんまり大きすぎてよほど上流まで行かないと鮎をとる手立てがない、してみるとやはり、この吉賀川は彼等の口にするごとく「名うて」の川にちがひなかつた。
「どうも、やつぱりねえ。調子が悪い」
「よく来てくれましたな。けふはゆつくりしてもかまはんのでせう。あんたは碁を打ちますか。――さうですか、御存知ないですか。それはちよつと。まア、しかし、こんなものは覚えん方がいゝかもしれませんなあ」
「ズブリと相手の眼の中へさしこんでしまつたさうでね。――親方すみません、とあやまつたと云ふんだが、どうもね、――何しろ他の人の見てる前でやるんだから、たまつたもんぢやない」